一生手放せない本を永遠のものにした話

自炊に至った理由

普段から語学やプログラミングに関するわりと分厚い本を読まねばならないことが多く、なんとかソファーや机で読んでいたんですが、どうもムリがあると感じていました。というのもアイツらは平気な顔して馬鹿でかい空間を専有するんですよね。 ブックスタンド

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を使っても数冊広げれば机の上はそれでもういっぱいなわけです。紙と鉛筆を広げるスペースと食い合うんですよ。ブックスタンドを使うと多少はマシですが、今度はディスプレイを見る邪魔をする。机の上に置いてあるディスプレイの下の方が見えなくて、椅子から腰をあげて紙の上にキーボードを置いて作業をするとか…。何かが根本的に間違っている気がしました。

また、ソファーでの読書も限界が迫っていました。ふとした拍子に手首を痛めてしまい、弱ったところに数百グラムの荷重がかかるわけです。iPhoneですら持ちたくないのに、数百グラム。さすがに耐えられませんでした。結果としてこれが最後の一押しになり、自炊に挑戦して見ることにしました。

自炊する

紙の本をバラバラにしてデータ化するにはちょっと躊躇いがありました。別に作者様に申し訳ないとか、本を焼くとは何事だとか、そういった理由ではなく、単に読み終わった後に古本屋さんに売りに行くことができなくなるからです。物の価値というのは買値と売値の差額です。売れなくなるというのは、買値がそのままトータルコストになるわけで、僕のような貧乏暮らしをしている人にとってかなりの痛手になります。そこで、とりあえず手元に置いておくことが決まっている本

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安藤 貞雄
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を自炊してみることにしました。 もちろん高級な自炊対応スキャナやカッターを僕は持っていませんので、自炊代行サービスに依頼しました。辞書タイプの本なのでジェットスキャンがベストなようでした。申し込み後、本を発送して、届いた本見積もりが以下のようなものです。

■お申込み内容
『 スタンダードスキャニングプラン 』
  [オーダー内容] カット+スキャン+OCR
 [納期プラン] かっとびプラン

 [解像度] 600dpiグレー
 [圧縮率] 低圧縮
 [カバースキャニング] 有り
 [ファイル名書換え] 有り
 [書籍の処分] ジェットスキャンで処分
 [納品プラン] データ送信
 [グレー割引] 希望 [10%値引き]

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      [最終お見積金額] 2,394円です。
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 ■内訳
 [851P~1050P] 1冊    @630円  小計 630円
 [ご依頼冊数合計] 1冊
 ■追加オプション
 [内:OCR加工冊数] 1冊    追加@105円  小計 105円
 [内: 辞    書 ] 1冊    追加@1,050円  小計 1,050円
 [ 解像度追加料金 ] 1冊    追加@315円  小計 315円
 [ 圧縮率追加料金 ] 1冊    追加@105円  小計 105円

 [作業料金] 2,205円

 ■納品方法
 [かっとび追加料金] 315円
 [データ送信料金] 105円

 [合計金額] 2,625円
 [割引料金] -231円  [割引率10% ]

 [最終お見積金額] 2,394円です。

これに加えて送料はこちら持ちですので、おおよそ3000円ほどかかったことになります。出来上がったものはデータで納品されます。僕の本は一日かけて運ばれ、バラバラになり、一枚ずつ丁寧に白い光で焼かれ、

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になりました。解凍すると中に700MBぐらいのPDFファイルが入っています。

できあがり

結論から述べますと、600dpiはかなりオーバークオリティです。しかし一生使うことを考えると、あるいは丁度よいぐらいなのかもしれません。OCRオプションは完璧ではありませんが、まずまずの精度です。現時点では完璧な結果を追求することは難しく、将来的に自炊代行サービスでのOCR精度を超えるものが、家庭で簡単に付加できるようになる時代を待たなければならないでしょう。

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ブックスキャンでのOCRの結果

英文混じりの日本語なので難易度が高いです。ぼちぼちな精度ですが、AcrobatOCRをかけるのと大差はありません。手元にAcrobatがあるならあえてOCRオプションを選択する必要はないかもしれません。

Acrobat8でのOCRの結果

及第点でしょう。英文の中のスペースが認識されていないのが難点です。

Acrobat12でのOCRの結果

えっ これさいしんばんあくろばっとですよね えっ

天国へ旅立った本と、どこでもお話できる

PDF化した結果、PC、iPhone、タブレット、E-INK端末など、様々なデバイスから本にアクセスできるようになりました。特にKobo Touchは専用端末として活躍しています。軽く、バッテリーも長持ち、さらに紙のような視認性で、ソファーで読むための最高の選択肢です。PDFからEPUBに変換し、見出しを詳細に打つことで、目的のページを探す速度も十分に高速です。外出中にふと文法について疑問を感じても、手元のiPhoneでサクッと調べることができます。PCで英文を書いているときも、PDFを隣に開いておけます。僕のお気に入りのこの本は、紙の本というハードウェアから開放されたことで、より深く僕と繋がったと感じます。どこにいても、どんな姿勢でも、さっと手に取れるこの感覚は新しくて、すごく安心するものです。未来人はきっと、紙の本に対して不安を覚えるに違いありません。

結論

今回の試みは大成功といえると思います。しかし、まだ一冊です。僕の机にはまだまだ山のような本があり…。これらが全て天国へ旅立つとき、僕の机は(そして僕の財布も!)新しい時代を迎えるのかもしれません。